Love of Food

東京・西麻布の人気ベトナム料理レストラン『Kitchen.』のオーナーシェフの鈴木珠美さんとの対談後編。みんな大好きなおやつ“チェー”について。

かれん ベトナムは、デザートも美味しいです。ベトナムでおやつといえば、まず思い浮かべるのは、チェー。あんみつのようなものですよね。
 
鈴木 チェーは国民食でみんな大好きです。穀類や豆類を甘く煮たものがクラシカルなものですが、最近では、カラフルなフルーツがどっさり入ったインスタ映えするものも増えてきて、若者に人気です。
かれん 温かいおしるこのようなチェーもあります。

鈴木 北部にはお椀で食べる温かなチェーが多いです。蓮の実をつかったものや、温かいお豆腐にジャスミンの香りのシロップをかけたスイーツなどもあって。

かれん おいしそう! 

鈴木 南部は氷を入れたものが多いですね。もともとは田舎の家庭で、来客をおもてなしするのにつくられたのがはじまりだそうです。「おつかれでしょう。どうぞ」と。甘い豆を煮て、おもてなしをしたのがチェーのはじまりなのだとか。日本の家庭で、ぜんざいでおもてなしをするというような感じですね。
<ベトナムならではの道具や食器類>

かれん 年に何回くらいベトナムに行かれていますか?

鈴木  年に3〜4回くらいです。今年は、新型コロナウイルスの影響でわかりませんけれども。家族みんなで行ったり、突然思い立って、2泊くらいでハノイかホーチーミンへひとりで行くこともあります。

かれん 日本にはない食材や道具も多いから、見つけると買いたくなりますよね。空芯菜カッターや野菜をキザギザに切る包丁とか。空芯菜は、ストローみたいなところに通すと、12等分できるのですが、空芯菜自体が日本にあまり売ってなくて(笑)。

鈴木 ギザギザ包丁は、大根や人参などの野菜を切ったり、チェーに入れるゼリーを切るときにも使います。大根、人参やパパイヤを千切りにする道具だったり、小さなコーヒーミルも、コリアンダーシードなどスパイスをひくのに使います。

かれん スパイスにも使えるんですね。
ハウス オブ ロータス 青山店オープンのパーティでは、鈴木さんにケータリングとして春巻き3種をサーブしていただきました。
鈴木 ライスペーパー戻し器は、乾燥しているライスペーパーを卓上で一枚ずつ戻すことができる道具です。生春巻きをつくるときに使います。ライスペーパーは、ベトナムでは米粉100%のものが売っているのですが、日本で売られているものは、米粉にタピオカが入っています。

タピオカ入りは揚げ春巻には適さないので要注意。サクッとなりません。現地では、ライスペーパーのバリエーションが豊富なので、網目の模様がついているものとか、ゴマ入りとかエビいりとか、玄米とかいろいろな種類があります。
かれん ベトナムの焼き物も好きなのですが、最近は、いいものを見かけることが少なくなってきました。

鈴木  ハノイ近郊でつくられるバッチャン焼きと、ホーチミン近郊でつくられるソンべ焼きが有名ですね。

かれん 私は、ソンべ焼きが大好きだったのですが、今はほとんどつくられなくなったときいています。ホーチミンのレックスホテルのオリジナルの陶器も生産中止になってしまって残念。
鈴木 私は、ホーチミンのレコンキエウ通りの骨董街で、オールド・ソンべを買いました。

かれん ベトナムには漆の器もありますよね。工芸もあるし。鈴木さんのレストランで使われている食器もキッチュでかわいいです。ホーチミンでは、チョロンの市場で買い付けされるのですか?
鈴木さんがコレクションしているソンベ焼き。『Kitchen.』でも実際に使っているそう。
鈴木 はい。チョロンは10個ワンセットで買わなければならないことが多いので、買い付けのときですね。

かれん 観光のときは、ベンタイン市場。勇ましい店番の女性たちが「安いよ、安いよ」と待ち構えていますので、心して行かなきゃ、ですよね。
<奥へ奥へ、ベトナム旅の楽しみかた>

鈴木  かれんさんはベトナムではどこがお好きですか? 気になる場所がありますか?

かれん 最近、海のリゾートが気になります。フォーシーズンズやインターコンチネンタルのホテルがあるダナンに、世界遺産の街のホイアンもセットで行ってみたいです。ビーチリゾートで有名なニャチャンから南に行ったところにある、アマンリゾートのアマノイもおすすめ。すぐ近くに昔ながらの漁村があって、漁師さんたちが一寸法師みたいにたらい船で沖に出る風景が印象的でした。
鈴木さんは、どこがおすすめですか?
カントーの旅の様子。
鈴木  ホーチミンからバスで2時間くらい行ったところにあるカントーを家族で旅したのですが、よかったです。子どもが小さいころは車をドライバーさん付きでチャーターして移動していたのですが、最近は、もっとローカルな旅に挑戦しようと思って、2階建てのベッド付きで眠れるデラックスバスに乗ってカントーにも行きました。

水上市場の文化が今も残っていて、活気づいています。船でしか行けない小さな島にあるホテルに泊まったので、自然の中でアフターヌーンティをしたり、スポーツをしたりできました。
かれん 北部では、ハノイから鉄道で9時間くらいかかる山岳地帯の街サパもよかったです。少数民族が住んでいる雲の上の街。モン族とかザオ族とか民族衣装を着た人たちがたくさんいて、民族衣装好きにはたまらない場所です。

鈴木 サパは、ぜひ行っていただきたいですね。

かれん みんな民族衣装を着ているけれど、携帯電話で話をしていて。

鈴木 そうそう。薪でご飯を炊いているのだけれど、携帯はあたりまえです。

かれん ベトナムって本当に奥深いです(笑)。

<前編はこちら>
<キッチンのお取り寄せ>
西麻布にある『Kitchen.』の店舗は、新型コロナウイルス感染症の自粛要請により現在休業中ですが、ご家族で『Kitchen.』の味を楽しんでいただきたく人気の「トムヤム鍋(Lẩu Thái)」と「ハノイのとり鍋( Lẩu gà)」のお取り寄せを4月20日(月)からスタートするそう。※2種類とも3〜4名様分

詳細は『Kitchen.』のインスタグラムにてご覧ください。
<ホーチミンのおいしい!がとまらないベトナム食べ歩きガイド>
鈴木珠美さんをはじめ、日本にベトナム料理を広めた足立由美子さん、伊藤忍さんの3人が案内する現地の食ガイド決定版!ベトナム・ホーチミンの専門店・屋台・おやつなどをご紹介する書籍が発売になりました。
20年以上にわたり現地に通い続けている著者だからこその、新鮮かつ信頼度の高い情報がたっぷり。おうちにいながら、ベトナムへ思いを馳せる楽しい時間に。次の旅先をベトナムに決めたくなるような充実の一冊です。

♢ホーチミンのおいしい!がとまらないベトナム食べ歩きガイド(アノニマ・スタジオ)
*本体価格 1,760円
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鈴木珠美 すずき・ますみ
1999年にベトナムに留学して、ホーチミンやハノイなどで現地のベトナム料理を学ぶ。帰国後、2002年3月に東京・西麻布に『kitchen.』をオープン。一躍大人気店に。『ベトナムおうちご飯』『ベトナム葉っぱごはん』『越南勉強帖―ベトナムについてお勉強してみませんか?』などベトナム料理やベトナム文化についての著書多数。最新刊は『ホーチミンのおいしい! がとまらないベトナム食べ歩きガイド』(共著)。


WOMAN IN LOTUS vol.6 鈴木珠美さんのインタビューはこちら