Love of Fashion

ハウス オブ ロータスで最初に洋服をつくることになったとき、真っ先に思い浮かんだのは、インドのブロックプリントのワンピースでした。インドで買い付けた生地でつくった初めてのワンピースのことは、忘れることはありません。以来、ブロックプリントのオリジナルアイテムは、ハウス オブ ロータスのファッションには欠かすことのできない定番になりました。
初めて作ったハンドブロックプリント生地は小花文様。
版木に文様を彫り込む職人。
ブロックプリントとは、図案を彫った版木に一色ずつ染料をつけて、スタンプのように手作業で生地に押していくもの。たとえば、木の図案であれば、まずは木の輪郭、葉の色、幹や枝の色を、版を変えながら押していきます。複雑なデザインのものでは何十色、つまり何十版も版をつくり、色を載せていくのです。一反の生地を仕上げるためには気が遠くなるような工程が必要ですが、工房で職人さんたちがポンポンポンと版を押していく様子は、なんともリズミカル。簡単に見えますが、繊細な図案を、線や色が大きくズレたりしないように押していくのは、熟練がなせる技です。
一色づつ、一柄づつ色をのせていきます。
その日の温度や湿度によって染料の量や版を押す力を調整したり、一色押すたびに、洗って干して色を定着させたりするため、天候にも左右されます。ハウス オブ ロータスの生地もなかなかできてこなくて、ドキドキすることもあるのですが、待ちに待った美しいテキスタイルが手元に届いたときは、よろこびもひとしおです。
インドの伝統文様も素敵ですが、ハウス​  オブ ロータスのオリジナルアイテムは、大人の女性が華やぐ軽やかなデザインと配色で、モダンな雰囲気を意識しています。版木を押すことで繊維に染料がしっかり浸み込んで布の裏まで色が映っているのは、手仕事であることの証。機械のプリントには出せない豊かな風合いです。
手仕事でつくられた世界で一枚だけの生地と思うだけで、愛着も増すというもの。天然染料のため、少しずつ色落ちしてきますが、その経年変化も私にとっては贅沢です。ともに年月を重ねていくほど、ますます好きになっていく――。そんな服が一枚でも二枚でもあれば、人生は幸せです。