Love of Travel

スークを見下ろすリヤドの屋上テラスにて。
マラケシュ、フェズ、ラバト、タンジェ、カサブランカ――。
モロッコの街の名前は魔法の呪文のような響きです。私がモロッコに雑貨や絨毯を買い付けに行くときの拠点は、主にマラケシュ。迷宮のようなメディナ(旧市街)の中で、スーク(市場)や工房を訪ねて回り、数日間を過ごすのですが、宿泊するのは「リヤド」と呼ばれるモロッコの古い邸宅をリノベーションした宿です。
4本のオレンジの木が植えられた中庭。
リヤドとは、もともとアラビア語で「木が植えられた庭」を意味していたようですが、その後、パティオ(中庭)がある邸宅そのものを言うようになり、現在は、邸宅を利用した宿のこともリヤドと呼ばれています。
Riad Talaa 12にて。
マラケシュのメディナの中には数百軒ものリアドがあり、質素なところから高級なところまで個性もさまざま。30年ほど前から、新市街へと移るモロッコ人の古い邸宅をヨーロッパ人たちが買い取り、別荘にしたり、宿泊施設にしたりする動きが活発になったそうで、ヨーロッパとモロッコの感性が融合した、スタイリッシュなリヤドも多くあります。
以前、私が泊まったのは、バージン・アトランティック航空の創設者リチャード・ブランソンの妹のヴァネッサ・ブランソンがオーナーの一人であるリアド「アル・フェン」。
ほかにもイタリア王族の別荘だったリアドや、フランス人の建築家がオーナーのリアドもあったりして、モロッコの伝統的な建築とヨーロッパのモダンなインテリアを見事にミックスさせたラグジュアリーな空間は、世界中の旅人を魅了しているようです。
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El Fenn (アル フェン)
Address:2 Derb Moulay Abdellah Ben Hezzian Bab el Ksour
URL:https://el-fenn.com/
スーツケースをリヤカーに乗せて、ホテルまで歩きます。
メディナ内のリアドに泊まるときは、ちょっとした不便さも楽しまなければなりません。メディナの道は細く入り組んでいるため、車が入ることができるのは、ほんの数か所のエリアのみ。タクシーが停車できるエリアまで、リアドのスタッフに迎えにきてもらいます。リアカーに荷物を積んで運んでもらい、私たちも一緒に石畳の道を歩いて付いていかなければならないのです。でも、民族衣装のジュラバを着た商人や大道芸人、ロバが行き交うにぎやかな喧噪の中を歩くのも刺激的。夕暮れ時には、大広場に屋台が出始めます。
屋上のテラスにて、娘たちと朝食。
多くのリアドの入り口は、石壁に囲まれて薄暗いのですが、玄関をくぐって、敷地内に一歩入ると、明るいパティオが広がります。パティオの四隅にはオレンジの木が配置されているのが典型的。モザイクの装飾や石膏の彫刻などイスラムの美に満たされます。屋上のテラスで食事をしたり、パティオでお茶をしたり、風と街の音を感じながら暮しているように滞在できるのが、リアドならではの魅力です。
今年は、エッサウィラというマラケシュから車で2時間半ほどの港町にも足を延ばしてみました。建物の白壁と空と海のブルーがまばゆく輝く海辺の街。宿泊した「ヴィラ・マロック」は、3軒の小さなリアドをつなげた宿で、窓の外の景色と同じように白とブルーを基調としたエレガントなインテリアが素敵でした。そして、ここは朝食も夕食も本当においしくて大感激! 
タジン鍋を使ったごくごくふつうの家庭料理でしたが、そういう素朴でおいしい地元の味との出合いは、旅先では大きな幸せになりますよね。
青と白を基調としたエッサウィラらしいリヤド。とにかくご飯がとっても美味しい!
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Villa Maroc (ヴィラ マロック)
Address:10, rue Abdellah Ben Yassine, Essaouira
URL:http://www.villa-maroc.com