Love of Flowers

ゴールデンウィークは毎年、葉山の家で過ごしています。この季節なによりもうれしいのは、庭にある藤棚の花が満開になること。葉山の青い海を背景に、薄紫色の藤の花が幾重にも房になって咲き誇り、まるで絵画のような美しさです。
花の見頃は約1週間と短く、毎年必ずタイミングよく見ることができるというわけではありませんが、花が終わると葉と蔦だけの緑の屋根になって木陰をつくり、藤棚の下は、夏の間、家族が憩う場所になるのでした。
藤棚は葉山の家の前の所有者の方によってつくられたもので、おそらく何十年もかけて、ていねいに育てられたのでしょう。一本の幹が途中で二本に分かれて、二つの棚になっています。
藤は、遠い昔から日本にある植物だったようですね。古くは万葉集の中にも藤の花を歌った和歌があります。


 我がやどの時じき藤のめずらしく

  今も見てしか妹が笑まひを   大伴家持



「私の庭の季節はずれの藤がめずらしく愛しいように、今もあなたの笑顔を見たい」という甘美な恋の歌。いにしえの人も藤色の花の下に佇み、甘い香りに包まれた時間があったことを思うと、なんとも胸が高鳴ります。