Love of Flowers

チューリップは、待ちに待った春の訪れを教えてくれる花。ガラスの花器にさまざまな色と形のチューリップを生けるのは、私の定番の春のアレンジです。私たちが子どものころ、チューリップの花といえば、赤、白、黄色・・・と、まさに『チューリップ』の歌のようなイメージでしたが、最近は、色も繊細で、2色のグラデーションのものがあったり、八重のものや花びらがフリンジになっているものがあったり、驚くほど品種が豊富。基本的にも花を生けるときは単色でまとめるのが私の好みですが、春の陽気な気持ちに誘われるのでしょうか、チューリップはたくさんの色と種類を混在させて飾るのが気に入っています。
おもしろいことに、チューリップの花は、土に植わっているときにはまっすぐ咲いているのに、花瓶に入れると、茎はやわらかくしなり、花も温度によって開き方が変わったりします。こうした動きがある花の特性に、今回使用したガラスの花器の有機的なフォルムが調和するようです。花器はフィンランドの建築家、アアルトがデザインしたもの。波のようなカーブに添って花々がふわりと広がり、美しく見せてくれる名品です。我が家でこの花器にチューリップを飾るときには、夫のお気に入りのリトグラフの近くが定位置。みずみずしい絵の世界とガラスの透明感、そして、絵の具のパレットみたいにカラフルな花の色が溶け合い、まるで一枚の絵のような景色に見えるのが素敵です。
最近、一般的な切り花の姿だけでなく、球根を付けたままのチューリップも販売されていることを知りました。ヒヤシンスやムスカリ、クロッカスなども同じですが、球根の花は、冬の間、力を蓄えて、一生懸命、水を吸い上げて花を咲かせているのを実感できるのが魅力です。球根付きの花をブーケにすれば、春ならではの贈り物に。ぜひ、ガラスの花器に飾って、球根と根の美しさも愛でたいと思います。

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小学館『Precious』の連載より抜粋
構成:高橋亜弥子
写真:上田義彦