Special Issue

—–国境も民族も宗教も超えて、まるで大地の鼓動を身にまとうかのようなゴージャスさを感じさせる  Minakusi(ミナクシ)のアクセサリー。永井健一さんと永井英里さんが一緒に活動する前はそれぞれ異国を旅して暮らしていたといいます。

英里 学生時代、イギリスやスコットランド、アイルランドの比較文化を卒論に書きたくて、イギリスを旅したときに、宿泊先のB&Bのおばあちゃんと出会ったことが、人生の転機だったのかもしれません。私が手に付けていたエジプトのブレスレットのモチーフを見て、「これはキリスト教では死を意味するのよ」と。でも、それはエジプトでは生を意味するモチーフなのです。そこから文化や宗教を超えた“祈る”という行為を深く考えるようになって。

健一 そのおばあちゃんにインドの話をきいたのをきっかけに、その後、インドに行ったんだよね。

英里 そう。それでインドにすっかりはまって、1年間沈没するように住んでしまいました。インドの手工芸品を日本で売るようになり、さらに自分でもつくるようになって、健さんと知り合ったのは表参道のストリートギャラリーですね。
健一 2000年代のはじめのころまで、東京の表参道には露天で物を売る人たちがたくさんいたんですよ。僕も大学を卒業後、南米を縦断する長い旅の途中、チリで石の研磨や銀製品の加工を覚えて、日本に戻ってからは表参道で自作のアクセサリーを売っていました。

英里 南米に行ったのは、学生のときに観た映画がきっかけだったんでしょう?

健一 『ラテンアメリカ 光と影の詩』という映画を見て、南米の最南端まで行ってみたくなったんだよね。「ディジュリドゥ」というアボリジニの管楽器を演奏しながら、アメリカから陸路で南下。ところどころで「あの街にはこういう人がいるから会いに行ったらいいよ」と旅の道しるべになるような情報をもらいながら旅をして、途中で、石の研磨の仕事もしながら、2年ほど南米に滞在しました。

英里 旅の情報は、旅人から。

健一 これは、今も変わらない僕たちの旅のスタイルかもしれないね。
――アジアを旅する英里さんと南米を旅する健一さんが一緒に活動するようになったのは、2002年頃から。インド、ネパール、タイ、メキシコ…世界中を旅をしながら出合った天然石や民族のアンティークの素材、動物の牙、骨などをひとつの世界観でまとめ、美しいアクセサリーが生まれる。

英里 桐島かれんさんが元麻布で「ハウス オブ ロータス」を運営されているときに、私たちのアクセサリーを取り扱ってくださることになり、そこからふたりで活動を一緒にするようになりました。Minakusi(ミナクシ)とは南インドの魚の目を持つ地母神の名前です。インドには魚が人々を新天地に誘うという神話もあって、私たちもなにかに背中を押されるように目の前にある道を進んできたら、今に続いていたという感じです。

健一  一緒に活動するようになったくらいの時期から、世界中からアンティークのものがどんどんなくなっていきました。でも、本物のアンティークは、人が使ってきた柔らかい艶があります。そういうものの価値は、繊細でわかりにくいけれど、それでも、そこに魅力を感じていただけるお客様と出会えるのがうれしい。僕たちがアンティークや石を譲っていただいているインドやタイの人たちは本当に魅力的な人たちで、彼らから聞いた物語も一緒に、次の人に渡していきたいという架け橋のような気持ちもあるよね。

英里 文化や宗教が違う素材をミックスさせることに違和感を感じないかと尋ねられることがあるけれども、ヒンズー教のものにも、イスラム教のものにも、石にも木にも宿っているものを、外側から同等に見ることができるのは、日本人だからかもしれない。その国境がない世界観を Minakusiのアクセサリーを通じて味わっていただけたら、うれしいなと思っています。

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Minakusi

旅する国境のないアクセサリーブランドMinakusi(ミナクシ)。デザイナーの永井健一と永井英里が世界を旅して集めた貴重な天然石や民族の古い装身具に、新たな生命を吹き込んだエキゾチックな作品の数々は、唯一無二の圧倒的存在感と美しい輝きを放ち続けています。また、ハウス オブ ロータス 日本橋店のオープン記念ではMinakusi限定アクセサリーも展開中。