Love of Home

ここ数年、“ヒュッゲ”という言葉をよく聞くようになりました。ヒュッゲ=HYGGEとは、デンマーク語で「ゆったりとあたたかく、居心地のいい時間や空間」というイメージの言葉。デンマークの人たちにとって、なによりも大切なものなのだといいます。仕事中心の慌ただしい毎日から立ち返り、家の中で家族や友人たちと心地よい時間を過ごす、ヒュッゲな暮らしが世界中で見直されています。 
私がデンマークの人に教えてもらったヒュッゲは、家族や友人とのつながりを大切にすること。ものを大切にすること。無理をしないこと。見栄をはらないこと。今あるものに感謝して、幸せを自分で見出すこと。ヒュッゲは、心地よい時間の過ごし方のノウハウというよりも、幸せを感じる心の持ち方といえそうです。

3年ほど前、私が北欧に行ったときは夏でしたので、夜遅くまで陽が沈まない白夜を体験しました。冬は日照時間が短くなり、人々は家の中で過ごす時間が多くなります。部屋にキャンドルを灯して、編み物をしたり、絵を描いたり、読書をしたり、家族や友人たちとのんびりおしゃべりをしたりするのもヒュッゲな時間。最近の私の暮らしの中のヒュッゲをいくつか紹介しましょう。
「植物を育てる」
夏に引っ越しをして以降、家の中に観葉植物がますます増えて、現在60鉢くらいを育てています。気が向くと霧吹きを持って、せっせと葉っぱや土に水をあげています。植物はそれぞれ育て方が違うので、日当たりと水のあげ方に配慮が必要。Picture thisというアプリは、植物の写真を撮影すれば、名前や育て方を教えてくれるので重宝しています。そして、本格的な冬が来る前に、ヒヤシンス、クロッカス、スイセン、ムスカリなど春の花の球根を、庭に植えようと思っています。寒い季節を越して、春を迎える準備を今から––––。季節を待つ楽しみがひとつ増えました。
「音楽と過ごす」
長年だれも手をつけず、ほこりをかぶっていたピアノをリビングに出してきて、ステイホーム期間中に、少しずつピアノを弾き始めました。教本を見ながらの独学ですが、私が弾いていると、子どもたちもまたときどき弾くようになって、家の中に音楽が流れるようになりました。そして、最近、久しぶりにレコードも聴くようにもなったのです。今は音楽アプリなどで1曲ずつ聴くのがすっかり一般的ですが、ジャケットからレコード盤を取り出して、プレイヤーに載せ、そっと針を置けば、一枚のアルバムをじっくりと聴きたくなります。ビビッドに響くアナログのレコードの音を聴いていると、ゆったりとした思いが心に広がります。
「キャンドルを灯す」
炎のゆらめきを見つめるだけで、気持ちがリラックスするものです。さまざまな大きさのキャンドルを複数並べると、光のボリュームが大きくなり、空間に印象的なコーナーをつくることができて、おすすめです。木のトレーの上にキャンドルを3〜4個載せるのも素敵。火は、人と人とを親密にさせてくれる気がします。暖炉や囲炉裏を囲むのはもちろん、鍋料理をしてみんなで火を囲むだけでも、心が打ち解けていくのがわかります。
こうして考えてみると、ヒュッゲとは、家族をはじめ、自分だけではないだれかの心地よさを思うことなのかもしれません。まだまだ不安定な毎日が続いていますが、あたたかな人とのつながりをあらためて大切にしたいと思う今日この頃です。