Love of Flowers

ハワイアン・カルチャーの代表ともいえるフラ。
フラのダンサーたちの首元や頭を飾る、色鮮やかな生花のレイの美しさに心惹かれて、私も花を編んでみたくなりました。

笑顔あふれるレイメイカー&フラワーアーティスト、UMAHANAの大谷幸生さんに、ハワイアン・レイの編み方と魅力を教えていただきました。
――身につける人を思いながら

かれん わぁ!かわいいお花がいっぱいですね。

大谷さん(以下、敬称略) 春の花ってかわいいですよね。パンジー、ビオラ、忘れな草…。レイは、ハワイのものだからトロピカルな花々でつくるものだと思われがちですが、日本の花でも素敵なんですよ。レイのつくり方にはさまざまな種類がありますが、まずは、花を針と糸でつなぐ「クイ」という手法で、カーネーションのレイをつくってみましょう。


かれん カーネーションは花の持ちがよくて、一年中、手に入れやすいのがいいですよね。

大谷 今回は、小さな花がたくさん付いたスプレーカーネーションを使います。120cmの長さに切った綿の糸をレイニードルというレイ専用の長針に付け、花の顔が針の外側をぐるりと囲むように刺していきます。6輪で1周できたら、糸に下ろします。このとき、花を動かすのではなく、針を引いていくのがポイントです。
かれん (作業しながら…)少しずつコツがわかってきました。そもそも、大谷さんがレイと出会ったのは、どのようなきっかけだったのですか?

大谷 昔、ガソリンスタンドで働いていたときに、給油でスタンプを集めると花をプレゼントするというサービスをしていたんです。そのため近所のお花屋さんに行くようになったんですが、見ていると、お店でおじさんが楽しそうに花束をつくって、それをお客さんがよろこんで買っていく。その花束がプレゼントであれば贈られた人もよろこぶし、さらにそれを持って帰ると「素敵な花束いただいたのね」と家族もよろこぶ。こんなにたくさんの人たちによろこびを与える花ってすごい!と思って。

かれん それでお花の仕事を始められたのですね。


大谷 花屋をオープンするも2年で閉じて、雑誌のフラワーアレンジの仕事をしていたのですが、豪華な花を豪華な花器に飾るのではなくて、ふつうにお花を楽しむ人を増やすことができたらいいな、と思って。レイを知ったのは、ちょうど、そのころ住んでいた葉山の家の近くのハワイアン・カフェに通うようになってからです。あるとき、そこで働いている彼女たちに、仕事で使ったランの花をプレゼントすると、『ありがとう!』とみんな花を一輪ずつ、耳元に飾ったんです。彼女たちはフラをやっていて、踊るときには、花をつけることを教えてくれました。日本では生花のレイが手に入りにくいから、プラスチックの花飾りを付けているということを聞き、よろこんでくれる人がいるかもしれないと思って、生花でレイをつくりはじめたんです。
――ハワイの島々と花々

かれん 最初は独学。そして、ハワイのマリー・マクドナルド先生のところへ?

大谷 マリー先生は、ハワイ島で暮らす民俗学者でレイメイキングの第一人者。15年ほど前に先生とお会いすることができて、多くのことを教えていただきました。

かれん レイに使う花には、意味があると聞いたことがあります。

大谷 はい。ハワイには、それぞれの島や場所を象徴する花があるんです。たとえば、オアフ島は黄色の小さな花の「イリマ」、ハワイ島は赤い花の「オヒア・レフア」、マウイ島は「ロケラニ」と呼ぶバラ…。フラでその土地の神さまを讃える踊りのときには、その土地を象徴する花のレイをつけます。僕はマリー先生に「土地の花は、その場所に捧げるもの。私はハワイに住んでいるからハワイの花でつくるけれど、あなたは日本の花でつくればいいのよ」と教えていただいて、日本の花や植物でレイをつくる活動を始めました。

かれん 全国の農家さんやお花の生産者の方々を訪ねて、その場でレイを編んで贈るという、素晴らしいプロジェクトですよね。あ、カーネーション、全部つなぎ終えました。

大谷 早いですね! 両端の糸を結んで輪にしたら、完成です。

かれん 身につけたときの重みとほのかな香り、しっとりとした質感は、生花ならではですね。


大谷 マリー先生からレイメイキングに大切なのは「香り」「サイズ」「色」「質感」「動き」だと教わりました。「香り」は、花のいい香りは、身につけた人を幸せにすること。「色」は、フラのためのレイは、曲の中に登場する花や、島を象徴する花や色を使うこと。「質感」は、つるつるした葉やもこもこした花など、花や葉の質感の組み合わせ。「動き」は、レイから飛び出したシダの葉先などが、踊りに合わせて揺れ、その動きも一体となること――。
――花を身につける幸福感

かれん フラは髪に花の輪の冠をつけて踊ることもありますよね。

大谷 ハワイでは頭につけるレイのことを「レイポオ」と言います。これを「ハク」と呼ばれる複数の植物を編む方法で、もう一つ、花の冠のレイをつくってみましょう。針と糸を使わないので、これをマスターすれば、タマシダの葉さえあれば、どこでもレイをつくることができますよ。

かれん 3本のタマシダを三つ編みするのですね。なんだか娘に三つ編みをしてあげたときを思い出します。編んで、花を挿して、また編む。右から?左から? ちょっと自己流になっています…。

大谷 大丈夫! 最初は細かいことは気にせず、一度編み始めたら、最後まで手を止めないで編み上げたほうがいいです。


かれん (なんとか完成!)大胆な私のレイに対して、大谷さんがつくったレイは、なんという可愛らしさ! 繊細さ!

大谷 いや、これは、ピンクの花でつくってくださいという、かれんさんのリクエストがあったからです(笑)。

かれん レイ・メイキングの楽しさと圧倒的な幸福感を満喫しました。素敵なレイをつくって、だれかにプレゼントしたくなりますね。
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UMAHANA 代表 大谷 幸生

1969年神奈川県生まれ。自然との調和を心がけ花の持つ美しさや意味を最大限に生かすことを心がけていたところ、レイと出会う。その後レイ作りの巨匠マリー・マクドナルドさんのもとで勉強を続ける傍らイベントやワークショップを開催し、その活動は全国各地にわたる。
日本の土地に育つ花とハワイに伝わる様々な手法を巧みに駆使しオリジナルのレイを編むレイメイカーとして、また雑誌や広告の花などを手がけるフラワーアーティストとして活動中。